2017年、物理学者のチームが大ピラミッドに粒子検出器を向けた。610万トンの石灰岩の奥深く、「大回廊」と呼ばれる通路の上あたりに、全長およそ30メートルの巨大な空洞が見つかった。そこに通じるトンネルはない。既知のどの部屋ともつながっていない。4500年以上前、ファラオ・クフ王の労働者が最後の石を据えたその瞬間から、完全に封じられたままだった。
発見の方法がまるでSFだ。研究チームが使ったのは「ミュオン透視」という技術——宇宙から降り注ぐ宇宙線が生む素粒子「ミュオン」は、岩石を突き抜ける性質がある。石が密なら粒子は遮られ、空間があれば素通りする。その透過パターンを記録すれば、ピラミッドの内部をCTスキャンのように可視化できる。こうして、何千年も調べ尽くされたはずの建造物の中に、旅客機の胴体ほどの空間がぽっかりと浮かび上がった。
ピラミッド内部でこれほどの発見があったのは、実に1000年以上ぶりだった。前回は西暦820年頃——バグダッドのカリフ、マアムーンが部下に命じて石に直接トンネルを掘らせ、上昇通路と「王の間」に押し入った。それから1200年間、内部構造はすべて解明済みだと誰もが信じていた。2017年のスキャン結果は、その常識を木っ端みじんに吹き飛ばした。
ニュースが出た瞬間、学界は騒然となった。「建設時にできた隙間にすぎない」と冷静に片づける専門家がいる一方、猛反発する研究者もいた。30メートルもの空洞が大回廊の真上にぴたりと位置している——偶然とは思えない。未知の埋葬室か。聖なる文書を封じた保管庫か。あるいはクフ王本人の本当の安息の場所か。驚くべきことに、クフ王のミイラは今なお見つかっていない。
もどかしいのは、空洞の存在を知りながら中を覗く手段がないことだ。極細のドリルで穴を開けて小型ロボットを送り込む案も出たが、エジプト政府は首を縦に振らなかった。地球上で最も重要な考古学遺産に穴を開けるリスクは、誰にも負えない。こうしてこの空間は宙ぶらりんのまま——検出されたのに触れられず、存在を感じながら立ち入れない。
考えてみてほしい。衛星が地表の隅々を撮影し、古代のDNAを解読し、海底の地形図まで描ける時代だ。それなのに、毎年何百万人もの観光客がセルフィーを撮るあの場所に、45世紀もの間秘密を守り続けた密封空間がある。「仏の顔も三度まで」と言うけれど、このピラミッドは盗掘者に荒らされ、カリフに穿たれ、宇宙線で透視されてなお、一言も漏らさない。仏より気が長い。
大ピラミッドは墓泥棒も、ダイナマイトを持ち込んだ冒険家も、古代エジプト以降のあらゆる帝国の栄枯盛衰もやり過ごしてきた。あの隠された空洞の中に何があるのか——ただの空気か、忘れられた王か、それとも誰も想像しなかった何かか——知る者はいない。4500年待った。もう少しくらい、どうということはない。
