古代世界の七不思議のうち、六つはすでに決着がついている。ギザの大ピラミッドは今も立っているし、ほかの遺跡もすべて見つかっている。ただひとつ、バビロンの空中庭園だけが——神のためでも権力の誇示でもなく、愛のために造られたとされる唯一の奇跡が——いまだに見つかっていない。基礎も、根も、レンガひとつも。人類史上もっとも有名な庭園は、そもそも存在しなかったのかもしれない。

The place
Babylon
消えた楽園
古代世界七不思議で唯一、愛のために造られ——そして唯一、存在しなかったかもしれない奇跡
物語の教訓
“人類史上もっとも美しい庭園は、存在しなかったのかもしれない。あるいはまったく別の場所にあり、別の王が、愛とは関係のない理由で造ったのかもしれない。それでもこの物語が二千六百年にわたって語り継がれてきたのは、考古学では届かない場所に触れているからだ。愛が十分に深ければ、不可能なものさえ花を咲かせることができる——人々はそう信じたいのだ。テラスがバビロンにあったかニネヴェにあったか、アミュティスが実在したか後世の創作だったか、それは問題ではない。空中庭園は、人類がもっとも古くから守り続けてきた信念の記念碑なのだ。私たちが最も偉大なものを造るのは、自分のためではなく、不幸せな顔を見ていられない誰かのためなのだと。”
登場人物
出典
Josephus, Contra Apionem I.19 (quoting Berossus, Babyloniaca c. 290 BCE); Diodorus Siculus, Bibliotheca Historica II.10; Strabo, Geography XVI.1.5; Philo of Byzantium, De Septem Orbis Spectaculis; Dalley, Stephanie. The Mystery of the Hanging Garden of Babylon, Oxford University Press, 2013; Koldewey, Robert. The Excavations at Babylon, 1914; Finkel, Irving. The Ark Before Noah, Hodder & Stoughton, 2014; Reade, Julian. 'Alexander the Great and the Hanging Gardens of Babylon,' Iraq 62, 2000